〜Memories〜 6
翌日、昼前だというのにティアは指定された場所付近をうろうろしていた。傍目から見てもそわそわしているのが分かる。時々目を細めて満足そうにしているのは、昨日のことを思い出しているからだろう。今のティアがこの世に生を受けてから、他人から初めて貰った好意だ、無理もない。だから何の疑問も持たず、彼女は目を輝かせて待っている……。
そしてプロンテラ大聖堂の鐘の音が正午を告げてからまもなく、プロンテラ南入り口からペコペコ便がやってきた。周りにティア以外誰もいなかったので、ペコペコ便もすぐにティアのほうにやってきた。
「ちわー、ペコペコ便ですー。お届け先こちらでよろしかですね〜?」
「はい、ありがとうございます」
「それではここにサインお願いします」
ティアがサインを終えると、ペコペコ便の配達者は超でっかい袋をドサッと無造作に地面に置いた。
「あい、受け取り表確認致しやした〜。毎度有難うございましたッスー」
「え!?ちょ、ちょっと〜!」
ペコペコ便はティアが止めるのも聞かず、そのまま行ってしまった。残されたのは、そのでっかい袋のみ。
これはちょっと待った。
いや、もう明らかにおかしいのだ。
マミー人形は確か手のひらサイズだったはずなのである。
だがペコペコ便が置いていったのは人一人はゆうに入れそうな大きな袋だ。
特別サイズマミー人形か!?それとも大量に入っているのか!?
五寸では足らないのかそれとも大量の五寸釘が必要になるのか!?
は、おいといて、ティアは本当にどうして良いかわからず涙目状態だ。
これは本当にあの商人からのプレゼントなのだろうかと考えあぐねていたその時―――
「ひゃっ―――」
なんと袋の中身がもぞもぞと動いたような気がしたのだ!
いや、気のせいではない。動いている!
彼女は反射的に後ろに飛び退き、袋の様子を伺って怯えている。
「何が入っているんだろう……」
袋の中身はまるでもがく様に動いている。同時にうめき声も聞こえきた。
「ほぇぇ〜……」
あたりには誰もいない。
どうやら生き物が入っているらしい、というのは分かったが……。
まさかリアルマミー?
少し嫌な予感はするものの、流石に放置もできないだろうと判断したティアは意を決して、袋の口を縛っている紐をほどいた。