〜Memories〜 プロローグ
……千年前、己が存在を賭けた闘いがこの地で起こった……
彼の地をルーンミッドガッツ、神と呼ばれるものが全てを支配していた。
これに背いたものが居た。
彼らは神々の支配に反旗を翻し、その闘いは神々の黄昏、又はラグナロクとして語り継がれた。
この終焉なる戦いは双方に大破壊をもたらし、終結した。
神々と人々は火と水に護られ、悪意は地の深くへと逃れることによりその難を逃れた。
千年という束の間の安息の後、悪意が再び動き始めたことを知った神々は彼の地にエインフェリアと呼ばれる戦士達を送った。
神々の代わりに悪意を浄化する、いわば神罰の代行人として――
エインフェリアは老いることもない。
悪意によって肉体が滅んでも魂は残り、神々の手によって再び地上に召喚されるのだ。
今日も一人のエインフェリアが彼らの教育係でもある神々の代行人に見守られ、下界へと降り立っていった……。
”特に問題はなさそうだったか”
”はい、我々代行人の成すことは以上です”
”彼女は前世で優秀な戦績を挙げた一人だ。今世でもそうあることを願おう”
”あぁ、あの方の噂は我々の耳にも届いております。彼女だったのですね。えぇと、確か名前は……”
……ティア……と
暗がりに、嫌な音が響いた。
塀の上を歩いていた猫がニャンと声をあげて逃げていく。
思わず身をすくませてしまうようなその音の直後、何か重たいものが地へと落ちる音が響いた。
それを見下ろす者の手には、鈍器がしっかりと握られていた……。