〜Memories〜 17

 
 「アコさああああああああああああああん!」

 「いた!」

パーティが気絶しているティアを発見したのは、それからまもなくのことだった。

 「アコさ……!」

駆け寄ろうとしたアサシンがふと足をとめた。
ティアは討伐隊に保護されていた。ロードナイトの腕にしっかりと抱えられ、傷も負っていない。ハンターはそのロードナイトの胸に付いているエンブレムを見て、ハッと息を呑んだ。

 「Lightsの討伐隊……! それじゃあDOPは!」

 「あぁ、今しがた倒し終えたところだ。これでしばらくはここも安泰だろう。パーティも決壊せずに済んだみたいで良かったよ」

 「有難うございます!」

 「それじゃあ私たちはこれで。頑張ってね〜」

討伐隊はティアをパーティメンバーへと引き渡す。
彼女が目覚めたのは、討伐隊が街に戻ってからしばらくのことだった。

 「あれ……私……」

 「アコさん!大丈夫!?」

ティアが目覚めるとパーティメンバーが一斉に覗きこんでくる。リーダーのハンターはふぅ、と溜息をつき、安堵したのかどっかりと腰を落とした。

 「いやー、本当にDOPがくるとは思わなかったよ」

 「DOP……そういえばDOPは!?」

 「DOPは討伐隊がきてくれて何とかなったよ」

彼女は先程起こったことを全て思い出した。
DOPは討伐隊に……。そうだ、彼は、彼はどうなったのだ……!?

 「クルセさん……クルセさんは!?」

 「ここっすよ〜」

 ウィザードの影から、囮となってパーティを逃がそうとしたクルセイダーがひょっこりと顔を出した。衣装はややボロボロになっているが、怪我ひとつない様だ。

 「クルセさん!」

 「いや〜、DOPの一撃は流石に重かったっす」

 「こいつ何とかぎりぎりのところでハエで飛べたらしいんだ。飛んだ先で半死半生になってたところを通りがかりのパーティが助けてくれたんだとさ。ちょっと情けないよな」

 「何をぅ!」

 アサシンはにやにやと茶化しているが、なんだか本当に安心した風である。周りもそんな二人に笑顔を向けた。辺りを再び安堵と自信が包みこんでゆく。

 「それじゃあ、気を取り直して狩りを続けましょうか」

 ハンターが立ち上がって皆を促した。その肩に止まっていた鷹も再び空へと舞い上がる。

 「はいっ」

 パーティメンバーも笑顔で頷いて立ちあがり、ティアも彼らに続いた。
 








プロンテラ南城門付近の広場は商人が集中しているのもあり、臨時など狩り場から帰ってきたエインフェリア達の集う、所謂清算場としての役割を担っていた。狩り場から帰ってきたエインフェリア達は大抵ここに来るため、待ち合わせの場所としても使われている。
今日も広場は沢山の人でひしめいていた。

 「ぁ、マスターお帰りぃ」

 「今日のDOPどうだった?」

ロードナイトを中心に十人弱の集団が一角に座りこむ。周りにいた人らは返ってきたメンバーを次々に労った。出迎えてくれるメンバーの明るさに反して、討伐から返ってきたものの一部の顔色が優れない。何やら思案している面持ちである。

 「エルだけ。まぁマスターはそれ以上に大きな収穫があったみたいだけどね」

 「でも本当に良かったんすか?マスター」

 「……彼女は臨時中だったじゃないか。迷惑をかけることはできないさ」

 「ういっす。あ、あの集団じゃないっす?」

 



 「お疲れ様でしたー! いやDOPに遭えて良かったような悪かったような」

 「まぁ誰も死ななかったんすから、おっけーということで!」

ティア達のパーティも無事にゲフェニアから帰ってきた。DOPというボスモンスターに遭遇しておきながら誰一人死ななかったのは、本当に奇跡みたいなものだ。
しかし良かった反面、ティアはなんだか寂しい思いを抱えていた。
前世とはいえ、知り合いを見殺しにしてしまった。勿論、相手はモンスターだ。仕方ないことなのだ。
そう言い聞かせても、なんだか胸を締め付けるような感覚は消えてくれない。

 「はいっ、今日の取り分はいじょです! お疲れ様でした〜。機会があったらまたDOPに逢いに行きましょう!」

 「俺は当分ごめんだがなー!」

リーダーが解散の合図を出し、メンバーは各々手を振りながらばらけていく。結局最後まで笑いの絶えないパーティだった。ティアも、また縁があればとそう思った。その後だった。

 「アコさんアコさん」

彼女を呼び止めたのは、件のクルセイダーである。

 「あ、はい。何でしょうか?」

 「今日は本当に有難う。……その、これも何かの縁だと思うしさ、俺の相方になってくれないっすか?」

 「え……?」

 「あぁいや、急なお願いでごめんなさいっす。要はこれからも長くお付き合いできたらなと、そう思って……」

彼は顔の変わりに耳が赤くなる性質らしい。髪の色と同じくらい耳の先を真っ赤に染めて、気まずそうに眼を泳がせている。
相方というのはティアもぼんやりとは知っていた。例えればティアとフェイはそんな関係だっただろう。

 「……ごめんなさい」

ティアは顔を上げられなかった。

 「忘れられない人が……いるんです」

 「そっすか、俺は気にしないけど……。まぁ無理強いも出来ませんよね。有難う、このことは忘れてください。また臨時でお会いできたときはよろしくです」

クルセイダーはそう笑い、手を振って歩いて行った。その後ろにフッと影が過ぎったかと思うと、ハイディングで様子見していたアサシンが彼について行く。

 「お前振られちゃったのかよ〜!」

なんて声が聞こえてくる。
超余計なお世話であるが、あれが彼なりの慰め方なのだろう。でもやはり悪趣味である。
その様子を遠くから眺めている一団がある。一部はほっとした様子で腰を下ろしていた。

 「終わったっぽいね、マスター。行くなら今……あいつら!?」



 「よう、ティアさん」

ふいに後ろから声をかけられティアは振り返った。
そこには如何にもガラの悪そうな茶髪のローグと、その上位職の真っ白な髪の、鋭い眼をしたチェイサーがいた。


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